普段はHodaPressで海外のITツールを日本語で紹介しているのですが、今回は少し毛色の違う話題を個人ブログで。予測市場のPolymarketが「Perps(パープス、無期限先物)」という新機能を展開していて、これがなかなか誤解されやすい設計だったので、自分の頭の整理も兼ねて書いておきます。
警告
※本記事は情報提供を目的とした内容で、投資の勧誘・助言を目的としたものではありません。詳しくは記事末尾の注意事項をご覧ください。
そもそもPolymarketとは
Perpsの話に入る前に、Polymarket自体を知らない方向けに簡単に触れておきます。
Polymarketは「予測市場(prediction market)」と呼ばれるジャンルのプラットフォームで、選挙の勝敗、スポーツの結果、経済指標、企業の意思決定など、現実世界の出来事の「結果」をYES/NOのシェアという形で売買できるサービスです。
仕組みはシンプルで、たとえば「〇〇候補が当選するか」というイベントなら、YESシェアの価格がそのまま市場が織り込んでいる「当選確率」を表します。YESシェアを0.60ドルで買って実際に当選すれば、イベント終了時に1シェア=1ドルで清算されて差益が得られる。外れれば0ドルになり、投じた分がそのまま損失になります。株や為替のように「上がるか下がるか」を当てるのではなく、「起きるか起きないか」を当てる市場というのが一番の特徴です。
Ethereum・Polygon上に構築されており、決済は主にステーブルコインのUSDCで行われます。2024年のアメリカ大統領選で取引量が急増して一躍知名度を上げたプラットフォームで、現在はCFTC(米商品先物取引委員会)からDCM(指定契約市場)としての承認を受け、アメリカ国内でも合法的に運営されています。
今回取り上げる「Perps」は、このPolymarketが本来得意としてきた「YES/NOのイベント予測」とは別に新設された機能、という位置づけです。
何が起きたのか

2026年4月21日、PolymarketはX(旧Twitter)で「We price the future. Now you can lever it.(未来の価格をつけてきた我々が、次はレバレッジをつける)」というポストとともに、Perpsという新機能を発表しました。同じタイミングで、ライバルのKalshiも独自の暗号資産perps参入を計画しているという報道が出ており、両者がほぼ同時に「レバレッジ商品」に手を伸ばした格好です。
この動きを後押ししたのが、PolymarketがCFTC(米商品先物取引委員会)からDCM(指定契約市場)としての承認を取得していたこと。これにより、アメリカ国内でも合法的にレバレッジ商品を提供できる土台ができていました。狙いはCoinbaseやRobinhood、Krakenといった、すでに予測市場機能を取り込んでいる暗号資産取引所側の顧客層とも言えそうです。
なお2026年8月時点でも、Perpsへのアクセスはまだ完全一般公開ではなく、ウェイトリストや招待制での段階的ロールアウトが続いています。使ってみたい場合は必ずpolymarket.com公式から申し込むようにしてください。「招待コードで即アクセス」を謳う非公式ブログがいくつも出回っていますが、真偽不明なものも多いので注意した方が良さそうです。
そもそもPerps(無期限先物)とは
一言でいうと「満期のない先物」です。
- 現物取引:資産をそのまま買う。上がることに賭けるロングのみ。
- 先物取引:将来の売買条件を今決める契約。満期があり、期限が来ると清算される。
- Perps(無期限先物):先物から満期をなくしたもの。自分が決済するまでポジションを持ち続けられる。ロングもショートも可能で、現物価格からズレすぎないよう「ファンディングレート」という調整コストが定期的に発生する。
HyperliquidやdYdXといった暗号資産の取引所ですでに広く使われている仕組みで、PolymarketのPerpsもこの標準的なメカニズムをベースにしています。
Polymarketの「Perps」がレバレッジをかけるのは「価格」
ここが一番の要点です。Polymarketの公式ドキュメントには、こう明記されています。
Perpsは、指数・コモディティ・暗号資産・株式といった「原資産の価格」を追跡する無期限契約である。
つまりPerpsが対象にしているのは、**BTCやETHなどの暗号資産、NVDAなど個別株、S&P500のような指数、金や原油といったコモディティの「価格」**です。ローンチ時点の取扱いはBTC・NVDA・金が中心で、レバレッジは当初10倍、その後のベータでは口座によって最大20倍程度まで選べるという情報もあります(数字は情報源によってブレがあるので、正確な倍率は使う直前に公式ページで確認するのが確実です)。24時間トレードできるのもポイントで、特にNVDAのような個別株は通常の取引所だと開場時間しか動けませんが、Perpsなら夜間や週末のニュースにもリアルタイムで反応できます。
誤解しやすいポイント:選挙や経済指標などの「YES/NOイベント」にはレバレッジがかからない
一部のブログや解説記事では「Perpsで予測市場の確率(YES/NOの中身)そのものにレバレッジをかけられる」という書き方をしているものも見かけましたが、これは複数の一次情報・公式ドキュメントと食い違っています。
Polymarketが本来知られている「選挙で誰が勝つか」「スポーツの勝敗」「特定の出来事が起きるか」といったYES/NOのイベント契約は、Perpsが始まった後も引き続きレバレッジなしの1倍のままです。1,000ドル入れたら1,000ドル分のシェアが買えるだけ、という従来通りの仕組みです。
つまり今回追加されたのは「価格に賭ける新しい商品」であって、「予測市場の的中確信度を増幅する道具」ではない、ということです。ここを混同すると期待していたリスク・リターンと全然違うものを買うことになりかねないので、注意した方がいいポイントだと思います。
イベント契約側にレバレッジをかけたい人向けの選択肢もある
「自分の得意分野はまさにイベント予測で、そこにこそレバレッジをかけたい」という人向けには、Polymarket本体とは別に、YES/NOのシェアそのものに担保・貸付モデルでレバレッジをかける第三者プロトコルも登場しています(例:PredMartなど)。
- ノンカストディアル(シェアはユーザーのウォレットに残る)
- 解決(リゾルブ)まで持ち続けて、1シェア=1ドルで清算できる
- 倍率はPerpsより控えめで、だいたい4〜5倍程度
Perpsが「価格変動を取りに行く商品」だとすれば、こちらは「イベントの結果そのものへの確信度を増幅する商品」で、性質がまったく異なります。あくまで別プロダクト・別リスクなので、使う場合は自己責任でよく仕組みを確認してから、という前提は変わりません。
リスク面のメモ
Perpsは通常のPolymarketのシェア購入よりも明確にリスクが高い商品です。
- 清算リスク:レバレッジをかけている分、逆行すると証拠金がなくなり強制決済される
- ファンディングコスト:ポジションを長く持つほど、ロング・ショートの偏りに応じたコストが積み上がる
- 流動性が薄い銘柄がある:ベータ段階では板が薄い市場もあり、スプレッドや価格の飛びが起きやすい
- ベータならではの不安定さ:機能がまだ新しく、仕様や手数料体系が変わる可能性がある
KalshiやCoinbase、Robinhoodとの競争構図
PolymarketとKalshiがほぼ同時にperpsへ動いたことで、「予測市場プラットフォーム」と「暗号資産取引所」の境界がさらに曖昧になってきています。CoinbaseやKraken、Robinhoodはこの1年で相次いで予測市場機能を自社に取り込んでおり、逆にPolymarketやKalshiは暗号資産取引所側の主戦場だったperpsに参入した形です。若く投機志向の強いリテールトレーダー層を、お互いの得意分野から奪い合っている、という構図に見えます。
まとめ
- Polymarketの新機能「Perps」は、BTCやNVDA、金などの価格にレバレッジをかける無期限先物商品
- 選挙やスポーツなどのYES/NOイベント契約は引き続き1倍で、Perpsの対象外
- イベント契約側にレバレッジをかけたい場合は、PredMartのような別プロトコルが必要
- 2026年8月時点でもアクセスは段階的ロールアウト中。申し込みは必ず公式サイトから
「Perps」という名前だけ見ると予測市場そのものが変わったように見えますが、実態は「同じアカウントの中に、別のリスクプロファイルを持つ商品が並んで置かれた」というのが近い理解だと思います。動きの速い分野なので、また変化があれば追記します。
注意
本記事は2026年8月時点で公開されている情報をもとに作成した情報提供目的の記事であり、特定の商品・サービスへの投資を推奨・勧誘するものではありません。Perpsのようなレバレッジ商品は、証拠金以上の損失や強制清算(ロスカット)のリスクを伴います。また本稿執筆時点でPerpsはベータ提供中のため、対象銘柄・レバレッジ倍率・手数料体系などの仕様は今後変更される可能性があります。実際に取引する場合は、必ず公式サイトの最新情報をご確認のうえ、ご自身の判断と責任で行ってください。




